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「シミ」と一言にいっても、様々な色素沈着症が存在します。治療が比較的簡単なものから、ほくろ・アザに近く、治療に 1年前後も要するようなものまであります。専門医による適切な診断と、治療が重要です。
皮膚表層の色素を追い出すトレチノインと、皮膚深層の色素を破壊するレーザーの組み合わせにより、顔面部を中心にほとんどの色素沈着症の治療が可能になりました。
トレチノイン治療
東大医学部の吉村浩太郎講師が、日本で最初にこの治療を始め、軟膏の精製法やシミ治療の方法論を確立しました。トレチノインは本来脂溶性のものですが、これをあえて水溶性のゲルに強制的に溶かし、皮膚に塗ることで皮膚上での濃度が高まり、通常のクリーム素材のものより効果が高いのです。
皮膚の色は、表皮にあるメラニンという色素の量で決まってきます。メラニンは、基底層にある確率で存在するメラニンを産生する細胞「メラノサイト」が定期的に生みだされます。黒人・白人間でもメラノサイトの量はあまり差がなく、産生されるメラニンの量が圧倒的に違い、色の差となって現れるとされています。表在性のシミは何らかの形でこのメラニンが表皮・角質に溜まってしまったり、メラノサイトが何かの影響で活性化されてメラニン産生を増やすために起こるわけです。
トレチノインはビタミンAの仲間で、外用剤として皮膚に塗ると、皮膚表皮の一番奥にある基底層の細胞に働いて、この分裂を活発にします。この結果、通常28日と言われている表皮の入れ替わる周期を最短半分ぐらいにまで早めることができます。そこにハイドロキノンなどの漂白剤を併用し、メラノサイトに「これ以上メラニンを作るな」という指令を同時に与えてやることにより、通常の老人性の色素斑(あまりに角質が厚かったり手や足のものはまずはレーザーでこの角質を飛ばしてやる必要がある場合があります)や、ソバカス、扁平母斑(へんぺいぼはん)、肝斑(かんはん)などといった皮膚表皮の表在性疾患のシミを取り去る、薄くするということができるわけです。
※肝斑などはホルモンの影響によりメラノサイトが常に活性化されている状態ですから、レーザー・フォトフェイシャルなんかを打ってしまうと、強い光の刺激でさらにメラノサイトが活性化されメラニンを産生して逆に悪化してしまいます。このため肝斑はこのトレチノインの治療が基本となります。
ですから、日焼けや、単に色を白くしたい人、なんとなくくすみを取りたい人、乳輪の黒ずみ(これも表皮のメラニンが色の原因)を薄くしたい人にも向いています。ただ、強制的に代謝を早めてメラニンの排出を促すので、治療を開始してから数日から1週間ぐらいの時に少し炎症を起こして赤くなったり、皮がぽろぽろむけたりといった状態になります。逆に、多少この症状が出ないと色素が出て行かないので多少辛いのですが、日焼け止めをしっかりと使っていただき、お化粧で赤みなどをごまかしてください。
トレチノインは2ヶ月治療をして1ヶ月休むという3ヶ月が1クールとして治療の目安ですが、シミの種類や程度によって、クールを繰り返したり途中でレーザーの力を借りて治療を進めていきます。トレチノイン治療中は、反応が弱すぎれば効果がないので濃い濃度のものに変えないといけませんし、強すぎたり自己判断で急にやめたりすると、逆に先ほどのメラノサイトを活性化して色がついてしまうことがあるので、特に初めの2ヶ月は2週間に一度の通院がとても重要になります。
料金は、範囲が狭ければ1クールが税込42,000〜52,500円です(初めに初診料・薬代に31,500円(税込)がかかります)。範囲が広く、保湿などをよりしっかりした方が良いと判断される場合には73,500〜84,000円(税込)かかります(はじめに初診料・薬代に42,000〜52,500円(税込))。
トレチノインは表皮の成長を早めるので、ケミカルピールの効果も併せ持ちます。慣れてくれば自宅でできること、また、真皮にも働いて長期で見ると真皮も厚くなり、肌にハリが出るなど若返り効果があること、3〜4週間使うと皮脂腺にも直接作用して油が出にくくなることから、ニキビの治療や小じわの治療にも用いられます。また、深いピーリングやアブレージョンのプレ・アフタートリートメントとして用いると、傷の治る期間を早めたり、ピーリング・アブレージョン・そのほかのレーザー術後の色素沈着を取り去ってくれます。
さらに、動物実験ではビタミンAを摂取しすぎると奇形児が生まれたという報告があります。皮膚に塗る程度では血中濃度は殆ど上昇せず、もともと体の中にあるものなので問題ないとは思いますが、一応トレチノインの治療期間中は避妊をしていただいています。

レーザー治療
表皮の疾患でも、角質が厚くなっていて、先述の薬が入っていかないと判断される場合や、主に真皮に色素の存在するアザに近い色素性疾患、太田母斑・伊藤母斑や表皮と真皮の両方に色素の存在する後天性真皮メラノサイトーシスや肝斑・炎症後色素沈着(タオルによるこすりすぎやアトピー性皮膚炎後の色素沈着)の中でも経過が長くてメラニンが表皮の基底膜を破って真皮の方にまで落ちてしまっているもの、などの本格的な治療はレーザーの力を借りないと不可能です。
ただ、日本人の大きい問題として、レーザーによりそのシミが取れたとしても、そのレーザーが皮膚を通過したことによって、先ほどの表皮基底層にいるメラノサイトが活性化してしまって、3週間から4週間後にぼんやりとした黒い色がついてしまうことが多いということです(炎症後色素沈着PIHと呼ばれています)。この場合には日焼けに気をつけて気長に待っていただくか、先程のトレチノインの治療をして表面の色素を追い出してやることになります。
また、表皮にメラニンが余りに多く含まれている疾患についても、初めからレーザーを当ててしまっては、表面のメラニンにエネルギーをトラップされて真皮まで届かず、何の治療にもならないといったことが起こりえます。逆に、角質が厚いものは初めにレーザーを使わないと治療がうまくいきません。当院では、表面を削る炭酸ガスレーザーやQスイッチヤグレーザー(ソバカスなどには実はロングパルスアレキサンドライトレーザーなどを使うこともあります)を使い分け、様々な色素性疾患を治療できる体制を整えています。
このように、シミ・アザは初めの診断と通院がとても重要です。一番簡単に取れるシミでも、やはり一旦出来てしまったものは通院の上2〜3ヶ月はかかりますので、きちんと医療機関にて治療されることをお勧めします。さらに、顔以外では皮膚の真皮・表皮の厚みや性状が異なる為に、本当に保湿をしっかりしないとトレチノインは意外と使い方が難しかったりします。これも医師の指導に従ってください。
また、特に顔以外の扁平母斑(メラノサイト自体が元々活性化しており再発が多いので、顔面でもトレチノイン、ハイドロキノンでなるべく再発しないようコントロールしていくことが大切です)では、Qスイッチ系のレーザー(色素のみを特異的に破壊し、細胞そのものは殆ど影響を与えません。ですから、逆に瘢痕(はんこん)にならないわけです)では治療が難しいこともあります。その場合には、ロングパルス(レーザーを当て続ける時間が長く、細胞を破壊します。逆に少し瘢痕になる可能性はあります)サンドライトレーザー、炭酸ガスレーザー(要するに表皮を削り取ってしまう)を用いたりします。ただ、それでも対応しきれないと考えられる場合には、ショートパルス(Qスイッチとロングパルスを合体させたようなものです)のレーザーを持っている施設(通常私自身の医局の関係で東大病院)を紹介する事にしています。
料金表
| 種類 |
料金(税込) |
| トレチノイン |
4万2000円〜5万2500円
(プラス薬代3万1500円)
7万3500〜8万4000円 (広範囲、
プラス薬代4万2000〜5万2500円) |
| レーザー |
レーザー使用料1回2万1000円
5250〜10500円(一平方センチあたり) |
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